外壁の打診点検の重要性 見えない劣化を早期に発見し、安全を守るために

外壁の打診点検の重要性 見えない劣化を早期に発見し、安全を守るために
マンションやビルなどの建物では、「外壁の打診点検」という言葉を耳にする機会があるかと思います。
これは、建物の安全を守るうえで非常に重要な点検ですが、その目的や必要性を十分に理解している方は意外と少ないかもしれません。
今回は、打診点検とは何か、なぜ行う必要があるのかをわかりやすく解説します。
■ 打診点検とは?
「打診点検」とは、外壁タイルやモルタルなどの仕上げ面を専用のハンマーで軽く叩き、内部の浮きや剥離を確認する点検方法です。
点検時には、打診棒と呼ばれる器具で「コンコン」と音を聞きながら、タイルの裏側に空洞ができていないかを調べます。
もし内部で浮きや剥離が進行している場合、時間の経過とともに外壁の一部が落下する危険性があります。
そのため、打診点検は「見た目では分からない危険」を早期に発見するための非常に有効な手段なのです。
■ なぜ外壁点検が必要なのか?
外壁は、風雨・紫外線・温度変化などの影響を日々受けています。
特に築10年を過ぎたあたりから、次のような劣化が目立ち始めます。
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タイルの浮きや剥がれ
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シーリング(目地材)のひび割れ
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モルタルの膨れやクラック(ひび)
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雨水の浸入による鉄筋の腐食
こうした劣化を放置すると、外壁落下事故につながる危険があります。
実際に全国では、タイルの落下により歩行者がけがをする事例も報告されています。
■ 法律で定められた「定期報告義務」
国土交通省は、建築基準法第12条により、特定建築物(マンション・商業ビルなど)について定期的な外壁調査を行う義務を定めています。
とくに、竣工後10年以上が経過した建物は、全面打診などを含む「外壁全面調査」が必要とされています。
この法令の目的は、「事故が起きてから対応する」のではなく、未然に防ぐための予防保全です。
定期的な点検を怠ると、行政からの指導や是正勧告を受ける可能性もあります。
■ 打診点検の方法と流れ
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目視点検
外壁全体を確認し、ひび割れ・欠損・汚れなどをチェック。 -
打診点検
高所ではロープアクセス(ブランコ)やゴンドラを使用して、タイルの浮き・剥離を確認。 -
赤外線調査(併用)
最近では赤外線カメラを用いて、効率的に広範囲の浮きを検出するケースも増えています。 -
報告書作成・修繕計画
調査結果をまとめ、修繕が必要な箇所の優先順位を検討します。
■ 点検を怠るとどうなる?
外壁タイルが落下した場合、
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人身事故(通行人への危害)
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建物所有者・管理組合の損害賠償責任
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修繕費用の高額化(劣化が進行するため)
といった深刻なリスクが発生します。
とくに事故が起きてからの修繕は、緊急対応となりコストも数倍に膨らみます。
■ まとめ:定期点検は「建物の健康診断」
外壁の打診点検は、建物の見た目を保つためだけではなく、住む人・通る人の命を守るための安全対策です。
マンションであれば、長期修繕計画の中に定期的な外壁調査を組み込むことが大切です。
もし前回の点検から10年以上経過しているようであれば、
ぜひ早めに専門業者へ相談し、「建物の健康診断」を実施してみてください。





